抗体が異物を無力化する仕組みと4つの働き

人間の体内に侵入してくるウイルスなどの病原体を抗原と呼びます。

抗体は抗原に特異的に結合することで、病原体を体内から排除してくれます。

抗体は特定の異物に対して特異的に結合するという性質を持っているため、例えば外から新型コロナウイルス感染症（COVID-19）抗原が侵入してきた時に、すでに以前にひいた風邪に対する抗体を持っていても、その抗体はコロナ抗原を排除することはできません。

抗体は、免疫システムの一つです。

免疫の種類は自然免疫と呼ばれる生まれつき体に備わっているものと、獲得免疫と呼ばれる一度体内に侵入したことのある病原体を記憶するものに分けられますが、抗体は獲得免疫によって作れます。

ようするに抗体を作るためには、一度体内に病原体を侵入させなければいけないということです。

そういう訳ではありません。

抗体の仕組みを利用しているのが、ワクチンや予防接種です。

抗体は獲得免疫によって作られますので、一度体内に病原体を侵入させなければいけません。

例えばインフルエンザの予防接種であれば、症状が出ない弱いインフルエンザウイルスを注射で体に投与します。

するとインフルエンザウイルスに反応して獲得免疫が働きますので、そのインフルエンザに対抗できる抗体が体内で作られます。

予防接種で投与したウイルスは症状を発症しないものですが、症状を発症する本物のインフルエンザウイルスが後に体内に侵入してきても、すでに体内に抗体を持っているのでウイルスに素早く対抗することができるのです。

抗体には、大きく分けて『中和作用』『オプソニン化』『細胞溶解』『炎症の誘発』の4つの働きがあります。

実は抗体そのものには抗原を分解する作用はありませんが、抗原を認識して結合することで細胞を活性化させて異物を排除する働きを活性化させます。

中和作用とは、ウイルスや毒素を無力化する働きのことです。

抗体は体内に侵入してきたウイルスや毒素の周りを覆い、受容体に結合できないようにします。

細胞に感染できなくすることで、細菌が作り出す毒素を抗体で中和します。

病原細菌などを貪食する、マクロファージや好中球といった細胞が体内にはあります。

これらの細胞は体内に侵入してきた異物を処理する役割を持っているのですが、抗体が細菌に結合することで、貪食活性を高める作用が働きます。

要するに、体内に侵入してきた病原細菌を食べやすく美味しくみせてくれる働きをするということです。

異物を食べやすくする環境を作る働きを、オプソニン化と呼びます。