PCR検査の特異度とは?感度との違いや注意点をわかりやすく解説
監修医師プロフィール
堤 直也
社会人経験の後、医学部学士入学を経て、医師となる。
国立病院機構等勤務のあと青い鳥会に勤務し現在に至る。
総合内科医、在宅医療の専門医として在宅医療の意味に真摯に向きあう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染について調べる検査としてはPCR検査のほかにも抗原検査、抗体検査がありますが、PCR検査はその中でも精度が高く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断に使われている検査です。
PCR検査について調べていると目にするのが「特異度」という言葉。
特異度は「感度」とあわせて検査の正確さを表す指標となっています。
この記事ではPCR検査の特異度について詳しく説明していきます。
PCR検査をこれから受けようとお考えの方も、すでに検査を受けた方も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対してしっかりと対処できるよう、特異度や感度について正しい知識を身につけておきましょう。
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特異度とは?
特異度とは、検査の正確さを表す指標となるもので、真陰性率とも呼ばれます。
特異度で何がわかるんですか?
特異度は、本当に病気に感染していない人(真陰性)を正しく陰性と診断することができるかという割合です。
特異度の高い検査は、間違って陽性になってしまうこと(偽陽性)が少ない検査となります。
難しいですね…。
それでは、わかりやすくするために例を挙げてみますね。
まず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染していない100人がいたとします。
この人たちを検査したところ、検査で陽性と診断された人は1人。
陰性と診断された人は99人という結果になりました。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染していない100人
- 検査結果:陽性…1人(偽陽性)
- 検査結果:陰性…99人(真陰性)
あれ?100人全員が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染していないはずなのに1人陽性と出てしまっていますが…。
この1人が、本当は陽性ではないのに陽性と判定されてしまう偽陽性です。
この場合、特異度は99%ということになります。
特異度とは、病気にかかっていない健康な人を正しく健康である(陰性)と診断できるかどうかという確率のことです。
そういうことなんですね。
つまり、特異度が高いほど間違って偽陽性が出てしまう確率が少ないということですね。
間違って陽性と診断される確率が少ないということは、その検査で陽性と出ればその病気にかかっている確率が非常に高いということになります。
特異度の高い検査は病気の確定診断に用いられます。
特異度と感度の違い
特異度のほかにも、感度という言葉がありますよね。
これはどのようなものですか?
感度は特異度とともに検査の正確さの指標として用いられます。
感度は真陽性率とも呼ばれ、本当に病気に感染している人(真陽性)を正しく陽性と診断することができるかという割合です。
感度の高い検査は、間違って陰性になってしまうこと(偽陰性)が少ない検査です。
具体例をお願いします。
先程の特異度と同じように例を挙げてみますね。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が100人いたとします。
この人たちを検査したところ、検査で陽性と診断された人は90人。
陰性と診断された人は10人という結果になりました。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している人100人
- 検査結果:陽性…90人(真陽性)
- 検査結果:陰性…10人(偽陰性)
本当は100人全員が陽性のはずなのに陰性が10人も…。
検査では陰性でも、この人たちは本当は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかっているんですよね?
この10人の人たちが偽陰性で、この検査では感度は90%だったということです。
感度とは、病気にかかっている人を正しくその病気である(陽性)と診断できるかどうかという確率のことです。
では、感度の高い検査とは偽陰性になってしまうことが少ない検査ということですね。
偽陰性になることが少ないということは、感度の高い検査で陰性と出ればその病気を持っている確率は極めて低いということになります。
感度の高い検査は除外診断に有用な検査です。
高特異度と高感度は両立しない
特異度100%、感度100%の検査というのは存在しますか?
どちらも100%であれば理想的ですが、多くの場合で特異度と感度はトレードオフ(一方を高くすると他方が下がる)の関係にあります。
トレードオフとは?
たとえば特異度で考えてみましょう。
特異度の高い検査は偽陽性が少ない検査ですが、検査の特異度を上げて間違って陽性になることを減らそうとすると、偽陽性は少なくなるものの偽陰性が多くなってしまいます。
これは感度も同様で、感度を高くすると偽陰性は少なくなるものの、偽陽性が多くなります。
PCR検査の特異度
では、PCR検査の特異度は何%でしょうか?
北海道大学大学院医学研究院の研究グループがおよそ2000もの症例を調べた結果、PCR検査の特異度は99.9%以上と非常に高いということがわかっています。
そんなに高いんですか?
感度も今まで言われていた70%ではなく約90%ほどだとも言われており、PCR検査は精度の高い検査だと言えるでしょう。
PCR検査の注意点
では、PCR検査はかなり信頼できる検査と考えてもいいんでしょうか?
PCR検査は特異度も感度も高い検査ですが、注意点もあります
PCR検査は検体採取が重要
どんな注意点があるんでしょうか?
PCR検査で調べる検体(患者さんの鼻やのどの粘液、唾液など検査の対象となるもの)の問題です。
PCR検査では、検体の中に含まれるウイルスの遺伝子を試薬や酵素などを使い、PCR検査機器の中で増幅することで検出可能にし、陽性か陰性かを診断します。
この時、もしも検体の中に含まれているウイルス量が不十分であると、増幅できず、陰性という結果になってしまうのです。
その人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかっていたとしても、検体の中のウイルス量が少なかったりするとPCR検査で陽性の診断ができなくなってしまうということですね。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のニュースでイソジンが話題になったことがありましたよね。
イソジンの有効成分であるポビドンヨードには抗微生物作用・抗ウイルス作用があります。
そのため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している人がポビドンヨードを使ってうがいをすれば、一時的に唾液中から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がいない状態になります。
この状態で唾液によるPCR検査を受ければ、本当は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染している人でも陰性となる可能性があります。
PCR検査の精度が高くても、検体採取がきちんとできていなければ精度が落ちてしまうんですね。
偽陽性と偽陰性の問題
検査の正確さは、対象となる集団全体の感染率(どのくらいの割合でその病気になっている人がいるか)によっても変化します。
どういうことですか?
検査で陽性となった人の中で本当に病気に掛かっている人の割合を陽性的中率と言います。
この陽性的中率は、対象となる集団の感染率によって変わり、感染率が低い場合は陽性的中率が低下します。
発熱などの症状がある人だけでなく、無症状の人なども含めPCR検査をより多くの人が受けると、その集団内での感染率は下がることが予想されます。
そうなると陽性的中率は低下し、つまり、本当は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染していないにもかかわらず陽性と判定されてしまう人が増えることになるのです。
このようなこともあって、PCR検査を行うことに対してさまざまな意見が出ているんですね。
まとめ
PCR検査の特異度とは病気にかかっていない人と正しく陰性と診断できるかどうかの確率のことです。
PCR検査は99%と、高い特異度の検査であるとされており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断として用いられています。
ただし、記事でもご紹介のようにPCR検査にも偽陽性や偽陰性があります。
PCR検査で陰性になったからと言って安心するのではなく、感染対策を怠らないようにしましょう。
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